DOS/Vブルース

<Facebookでブックカバーチャレンジが回ってきてしまったので1冊だけアップした。少し手直しして残しておく次第。>

鮎川誠の著作、『DOS/Vブルース』(1997年/幻冬舎刊)。もちろんシーナ&ザ・ロケッツの、である。学生援護会『Salida』のCMで「職業選択の自由 アハハン」とやっていたあのシナロケの(←この本とはあまり関係ない)だ。

最初はコンピューターを「ロック・スピリット」からほど遠いと感じていた彼が、ウィルコ・ジョンソンなど海外のミュージシャン仲間に感化されてパソコン(IBM Aptiva 730)を購入し、プロバイダーに申し込んでインターネットに接続し、Win95をインストールし、rokkets.com のドメインを取得してバンドのホームページを立ち上げるまでを事細かに、例の独特の語り口で記してある。

驚くのは、1948年生まれの鮎川誠が95年当時、友人やショップのアドバイスをもらいはしながらも「自分で」PCを選び、ネット環境をセットアップし、HTMLを手書きして、画像の加工・軽量化などの作業までもしていたことだ。

ファイル操作につまずく、文字を打つのにもつまずく、何をするにもとにかくつまずく。その度に、少しずつ使い方を覚えることを楽しんでいる。昔のコンピューター、インターネットはいろいろ自分でやらなきゃならないことが多くて面倒くさかったけど、それ以上に楽しかった気持ちをノスタルジックに思い出させてくれる。

自分の手でサイトをリリースした後、本当に他の人からもアクセスできるのか信じられず、親友に「そっちからも本当に見えているか確かめてほしい」と電話したエピソードや、サイト訪問者との直のコミュニケーションを楽しんでいる様子がたいへんほほ笑ましい。「ロックが好きならみんな仲間」で、パソコンでも何でも使って世界中のロックを楽しみたい、そんな気持ちが溢れている。

コンピュータについて、いろいろなことを知っていくにしたがって、コンピュータとロックって、正反対のように見えて、実はなかなかたくさんの共通点があることが分かってきた。

コンピュータの世界は、なんでも自分で決めて動かなければ何も始まらない。ひとつのキーを叩くのも、すべて自分の意志から始まる。そして、返ってくる答えは、イエスかノー、そのどちらかしかない。中間の曖昧な返事なんてない。

何をやりたいのか自分で決断して、そのためには何をやらないといけないのか、自分の選択にかかってくる。それってロック・スピリットそのものだ。だから今では、とても相性のいい友達みたいな存在に感じられる。今やPCは、僕の大切なロックの仲間だ。そして、ロックの好きな人たちにコンピュータをロックの仲間として、こいつはたいしたロックンロール・マシーンだぜと、紹介したいと思っているんだ。(第1章冒頭より)

この時つくった「ロケットウェブ」はそれからずっと、シーナがいなくなった後も、ローンチ当時の原型を残したまま運営されている(よってスマホでは見づらい)。

シーナ&ロケッツ・オフィシャル・ウェブサイト a.k.a. ロケットウェブ

DOS/Vブルース(単行本)

DOS/Vブルース(文庫)

ところで…

後日Twitterで、この『DOS/Vブルース』は山川健一さんの『マッキントッシュ・ハイ』とセットなのだと教わった。知らなかった。。そしてこちらは電子書籍化している!

マッキントッシュ・ハイ(Kindle版)

幻冬舎さん、『DOS/Vブルース』も電子書籍化の程、何とぞよろしくお願い申し上げます。